素晴しい健康法は「坐禅」その医学的裏付


村林由紀郎 
坐禅セラピスト
健康医学研究家
プロフィールは
別項をご覧下さい

    平成21年1月15日

◎ 坐禅はなぜ健康に役立つのか・その医学的根拠
【一】脳波をコントロールする坐禅
【二】精神電流現象
【三】動静一如(どうじょういちにょ)とは
【四】坐禅は自律神経を活性さす・・・「健康」へのキイ・ポイント
【五】坐禅で行う腹式呼吸法は精神力と健康を飛躍的に高める  
【六】腹式呼吸・健康の秘訣は横隔膜運動にある。
【七】坐禅はエネルギー代謝(基礎代謝)を2割も減少さす 
【八】以上のまとめ
【九】実際に坐禅するとどんな気持ちか?

坐禅 坐禅呼吸法を推奨される 有名人
○塩谷信男医学博士・106歳(2008年3月逝去)
日本を代表する健康医学の大家、博士自ら90歳になってから、「坐禅呼吸法法」=「腹式呼吸」で白内障前立腺肥大症を治す。
○日野原重明97歳 
(聖路加国際病院理事長・医学博士 睡眠時間3時間で大活躍 2008年10月「生活坐禅で長生き人生の進め」を著す
○有田秀穂・東邦大学医学部統合生理学教授
現代の脳科学研究の第一人者、健康を維持するには、セレトニン神経を鍛える必要がある。セレトニン神経を一番活性化させる最適な様式を確立したのが坐禅と言われています。
○平井富雄・東京大学医学博士
研究論文(坐禅の脳波的研究 集中性緊張解放による脳波変化)の論文より  坐禅が高度な健康法であると最先端テクノロジーで実証され、それにより従来の欧米の坐禅ブームを決定的なものとし、アメリカ、ヨーロッパの坐禅の大ブームに火をつけた。

坐禅が、癒しやリラクゼーヨン・健康に大きく寄与する事実は、アメリカ・ヨーロッパでは一般人の常識です。また「坐禅」は心身の悩みを解決すると同時に、生きがいの創造、逃げない自己、能力アップ、また喜び・感謝・幸福の実感など、人間性の向上にもこの上ない貢献をします。徳と能力を得てお金を得たい、人間関係を改善し健康と精神の安らぎが欲しい。これらの成就に最も近い人間改革法は坐禅といえます。禅語に、脚下照顧(きゃっかしょうこ=自分の足もとに注意せよ。真理を外にではなく、自分自身の内に求めよという意味)そうです、古来より日本には「坐禅」という人類の宝があったのです。

【一】〔脳波をコントロールする坐禅〕
「ゆったりと・穏やかで・心地よい」反対に、「心が痛む・悲しい・心が不安だ」などの精神状態如何によって私たちは「幸福」にも、「不幸」にもなる、その不思議な「心」なるものは、どこに、どの様な形態で・存在しているのでしょうか。精神医学で私たちの心をつかさどっているものが「脳」である事が解明されたのはまだ最近の事であります。

「脳」の研究に初めて医学的に取り組んだのは、イギリスの神経医・J・Hジャクソンであり、彼は「人間の脳に意識の中枢がある」と考えました、今日この説は間違いなく実証されました。その後の最新の分子生物学や脳生科学の発展のおかげで、脳の中身はかなり科学的に解明されてきました。

人間の精神活動における思考や感情の原点は、脳であることは間違いありません、しかし脳が考えるのか、心が考えるのかこれまた長い間世界中の宗教家、哲学者、心理学者、精神医学者によって研究されてきましたがまだまだ未知と謎があります。が精神活動の坐である脳の研究をとおし明らかになってきた事は、たとえば、望ましい精神状態は、脳がどの様な状態になった時もたらされるのか、

反対に望ましくない精神状態のときの脳についてはどうなのか?これがわかれば、脳をそのような状態に導いてやる方法を講じれば、私たちが望む精神状態が得られるのではないか、人間の精神活動と、脳の状態との関連を示してくれるバロメーターはないか?
とここまで(東京大学付属病院神経科医長)の平井博士が考えたとき、現代科学の水準で頼むに足る方法、信頼できる方法が一つだけある。それが「脳波」だと気付いたのです。

「脳」という闇の箱の中で行われる精神活動を、なんらかの形で人間の目で見えるものに置き換えてくれるのが「脳波」なのです。この脳波の存在に最初に気付いたのは1924年ドイツの精神医学者ハンスベルガーであり、人の頭から波型の電位変動が記録される事を確認しました、彼はこの歴史的発見から5年後論文を発表しました。

その後アメリカのブレーメ、フランスのリンズレイ、などの学者によって精神の働きに従って、脳波がどの様に変化するのかという関係がその微細な脳波のパターンによって解明されてきました、人間の精神活動に応じて時々刻々移り変わる姿そのままの形で、全く忠実に表現する現象であるのです。要するに精神活動がだんだんに強くなるに従って、

緊張の度合いにあたかも比例するように、脳波がベータ−波からさらにガンマ波へという、速い周波数(高サイクル)をもった波形に移り変わっていくのです。ではその脳波をサイクル別に説明しますと。
@ ガンマ波(30〜50サイクル)人がカーとして大喧嘩するなど、精神が非常に興奮したとき出る波
A ベータ波(20〜30サイクル)正常な人が眼を開けて、活発に日常活動するとき出る脳波  別名活動型脳波という

B アルファ波(10サイクル)最も基準になる脳波とされる。この波は正常な人間が、心身ともに安静な状態で眼を閉じて、くつろぎリラックスしたとき、脳が安静に向かうときに現れる脳波であり、坐禅中は眼を開けていても現れ、これを安静型脳波・ 坐禅型脳波という。このアルファ波は眠りに移行するにつれて次第に遅くなり、精神活動が緩慢になるほどゆったりとした大きな波に変わって行く、別名〔幸福の脳波〕

C シータ波(4〜7サイクル)寝入りばなのウトウトとしたとき出る波、超能力はこの状態のとき出るといわれる、坐禅の熟練者になると目をあけていてもこの状態になる。
D デルタ波(0,5〜3サイクル)非常に深い眠りの状態のときの波です。

さて以上をふまえ、宗教的方法の対極の位置にある、現代科学の先端技術を扱う科学者である 平井富雄博士が、なぜ坐禅に興味を持ったかといえば、一番目として、過去多くの実例から坐禅の経験者は、悩みや心配から解放され、運命に打ち勝ち、安心立命を得ることを身をもって体験している事実があることです。

例えば、明治維新の立役者であった勝海舟は「自分をつくったのは禅と剣だけだ」と言い切りましたし、また海舟と親交があり、同じく維新で活躍した有名人・無刀流の創始者で剣豪の山岡鉄舟は、坐禅によって・縦横自在・活殺自在の働き、つまり〔禅気〕という気合を会得し、師匠であった浅利又七郎も及ばない境地に達した話は有名なエピソードです。

(別項に挙げました坐禅で成功した有名人をお読み下さい)、

歴史上に名をとどめた人の中には、坐禅を行い自分の精神を鍛え上げ、心身ともに健康をかち得た人が非常に多く居るのです。熟練者になると、精神の絶対安定状態「悟り」を開き、「解脱・げだつ」という理想の心の境地に達するのです。しかし一般人でまだ経験の浅い方でも、私のメデイカルセンターでの長年の坐禅の指導経験からいえば坐禅を行うと皆異口同音に精神がグット安定し、穏やかになり心が満ちたり状態のなかにも力強い充実感が湧き上がるといいます。その結果ストレスが消え、不眠症、対人緊張、心理不安、自律神経失調症などの多くの心身症が改善しております。
平井富雄博士が坐禅に興味を持った二番目の理由は、先端技術がまだ進んでいなかった半世紀前の心理学者、佐久間鼎(かなえ)・東京大学名誉教授が提唱された(坐禅における三昧の境、すなわち無念無想の精神状態の脳の研究は・・後世において発達するであろう、脳波学の先端テクノロジーにおいて実証されるだろう)・・の学説がヒントになったとの事であります。

今一つの理由として、平井博士が各種の患者の脳の病気を治療する過程において、精神障害患者の脳波が正常人との違うことに疑問を持ったこと、それ以外に、健康な人でも例えば睡眠に陥ると、脳波が目覚めているときとは全く違うということ、又、新たな発想として睡眠以外にもこの様な現象はないのだろうかと、よく聞く話として坐禅のとき「無念無想」の意識になるといわれるが、それもきっと、佐久間鼎博士の予測通り、脳波に現れるに違いないと思われたからです。

坐禅は眼を開けて行います。しかし坐禅中は眠っている時よりも心が深く安定しています。
それならこの様なときの脳波は、どの様な現われ方をするのだろうか?脳の中の機能・働きを忠実に波形の曲線として記録できる脳波が、坐禅のとき変化しているのであれば、神秘のベールに包まれていた坐禅を、現代科学の土俵に引き出すこととなり、そしてそれがハッキリと証明されれば、すごい発見になるのではないか・・・・・

そしてこのとき発生する脳波が、脳生理学的理論に合致するのであれば、坐禅こそ他に類を見ない精神操縦法として科学的に確たる普遍性を持つこととなり、「健康」に坐禅がほんとうに役立つことが証明できるのではないかと考えて、坐禅中の脳波変化の研究を思い立ったのです。さていよいよ禅の長い歴史始まって以来の大事件である
実験が開始されたのであります、(このときの記録ビデオはNHKテレビで放映され大きな反響を呼びその後

世界中の精神医学会に大きな影響を与えました。私も当時大きな感銘を受け我が事のように嬉しく坐禅の力を納得しました。) さて1955年平井博士は、同じ東京大学の精神医学者である、笠松章博士と研究スタッフともども、東京都港区の青松寺という由緒ある寺院において、脳波測定の機械を搬入し禅僧が14名が協力し、その歴史的な実験は始められました。(同年6月には再度横浜市にある曹洞宗大本山・総持寺においてベテラン禅僧
18名の協力のもと坐禅中の脳波をより高度な測定器において実験された)

平井博士は緊張されたそうであります。長い間かかって体験的に会得した精神鍛錬の知恵と、西洋のテクノロジーをこのような形で結び付けてもいいのかどうか・・・・・・さて実験結果は驚くべき発見の連続であった。
坐禅中は目を開けているから、当然ベータ波が記録されるだろうとの予測は完全に裏切られた。坐禅を始める前は当然ベータ‐波が現れた。

しかし坐禅が始まり1分もしないうちに、目を開けているにもかかわらず、きれいなアルファ波が現れた。目を開けていながら、外部の世界とのあいだに緊張した関係が無い、
ゆったりした精神状態が続き、外部世界を見ているようで、しかしそれにとらわれない状態、すなわち、自分の外部環境にそのまま囲まれていても、決してそれらに支配されていない心の状態といえる。まさに驚くべき結果であり、しかも坐禅が始まって2〜3分後にはシータ波(7〜8サイクル)が定期的に出現している、

このシータ波はアルファ波よりゆっくりした波形で、寝入りっぱなのうとうとした状態でないと絶対現れないものであり、この精神状態は深い安定、幸福な気分や大変深いリラックスのときにしか現れない、目を開けての坐禅中であり、もちろん彼らが眠っていない事は臨床的には明らかである、さて30分経過し坐禅が終わっても坐禅の余韻が残り

アルファ波が出現したまま残り、実に5分間も続いた人も居た。この結果坐禅が意識の変化をもたらし、人間の精神状態を自由にコントロールできることが科学的に証明されたのです。しかももっと驚いたことは坐禅の効果が、坐禅が終了し、組んでいた足を解いたあとも、歴然と残存している事実をつきつけられたことです。

ではこの様な事実は、専門的なプロの坐禅修行者だけに現れる現象であるのか?そうで無ければ誰にでも起こる現象なのか?この問題を究明するため、同じ場所、同じ条件で坐禅の全く経験の無い若い人たちに正しい姿勢、や呼吸のしかたを教えて坐禅をさせた結果、
最初はやはりベータ−波が多かったが、しかし1〜2秒続くアルファ波がときどき現れていることが、確認されたことは驚嘆に値することであった。

ここで平井富雄博士は大変貴重な資料を得たこと、それは専門化の坐禅の熟練者が、味わった無念無想の境地は、彼らだけの専売特許ではないということであります。坐禅の経験を一度も経験した事が無い人達も、坐禅で行う正しい姿勢と、正しい呼吸法を練習すれば、
誰でも禅僧のような無念無想の境を一時的にしろ味わい、又継続すれば誰でも禅僧と同等の〔三昧の境〕(心が集中統一された精神の絶対の安定状態)

になれることが脳波が教えてくれたのです。坐禅は人間の精神状態を自由にコントロールできるという事実が、近代科学で証明されたのです。以上のことから今日のストレス社会に生きる現代人の「健康」に生かす、精神鍛錬法という観点から見ても今すぐにでも、私たちの日常生活の中に取り入れるべきでありましょう。

伝統的な神秘のベールに包まれて守られてきた坐禅を、禅僧だけの特殊階層だけの「宝物」にするのでなく、坐禅が科学的に一般的効率性を持つことがハッキリ証明された今日、宗教色を横に措いて、純粋な「健康法」「生活坐禅」として、誰でも自宅に居て何時でも、自由に活用すべきでありましょう。

【二】〔精神電流現象〕
さて平井富雄博士らは、坐禅と睡眠の両者の相違を確認し、脳の機能的変化の差を知る為に、今度は脳波を離れて、別の識別法によって、坐禅の脳科学的解明の研究がなされた。それが精神電流現象(GSR)です。これは人が精神的に動揺すると、皮膚の汗腺が影響を受け、電気抵抗が変わる現象です。よく警視庁で犯人を取り調べに使う
ウソ発見器は、この原理を応用したものです。

ウソをつくと、態度や表情は平然としていても、ウソをついたという心理的動揺が起こるので、その反応がポリグラフ上に現れるのです。犯行を否認する犯人も、色々攻められるとやはり精神的に動揺し、手のひらの電気抵抗が変化し、その変化がポリグラフにハッキリと描かれます。

よく「手に汗握る」といわれますが、やはり測ってみれば精神電流現象が認められます。この精神電流現象は、人が起きて日常生活の活動をしているときは、ひんぱんに起こる現象です。しかし睡眠中は起こりません。ですから座禅中に、アルファ波やシータ波など睡眠に良く似た波があるときに、この現象があるかどうかを調べれば、

坐禅と睡眠の極致を比較できると平井博士は考えられた。実験は坐禅中の禅僧に刺激装置から(カチィ)という音を自動的に流して聞かせ、その音に対する反応を脳波でみるのです。その結果ハッキリと音に気付いており、眠っていない事が確認された、しかしもっと大きな発見があったのです。

たとえば坐禅に関係なく、普通の人を寝かせ、目を閉じさせて、ゆったりとさせてから、刺激装置から定期的に刺激を与え、精神電流現象を出させても、2〜3回続くとその刺激に慣れや、習慣性が出て、あとはいくら刺激しても反応がなくなってしまいます。これが普通の常識的な人間の生理現象です。ところが坐禅はこの「慣れが起こらない」のです。

これは非常に重要な事なのです。この「慣れ」がなく、常に刺激に反応するということは、
脳波から見ると睡眠に等しいほど、精神がすごく安定したアルファ波、シータ波などの平穏な波型を示しながら刺激に対しては常に新鮮な反応を持続する、すなわち意識は休息していながら、活動しているという、とても驚くべき離れ業を演じている事です。
坐禅とよく似ている「催眠」=「催眠術」でも決してこんな複雑な形にはなりません、

人は「催眠」の暗示に掛かれば眠ってしまい、シーター波を示した段階で、外部より刺激を与えても全く無反応になってしまいます。医学的に強調しますと、実は坐禅のこの「矛盾した脳活動」こそ人間の「健康」に非常に有益で大変役立つ生理現象なのです。
〔外部からの刺激には平時より反応は鋭いが、精神状態は絶対の安定を保たれている〕、
〔脳活動が新鮮で長く持続されいるが、意識は絶対の休息状態にあるという、〕

一見矛盾した脳活動こそ、俗にいわれる(融通無碍=ゆうずうむげ)=(心と体はゆったりと安定し、何ものにもとらわれないが、どんな事態が起きても最善の対応できる)という仙人や超人的な心の境地なのです。坐禅を行えばストレスが消え、精神力は強くなり、能力がアップし、どんな事態にも沈着冷静で、能力を全てだしきれる精神状態にあるといえる意味が徐々にお分かりになってきたと思われます。

以上の観点から導き出される答えは、実は「健康」と「精神力」は重大な関係にあるということであります。健康的な人は必ず精神的に健全であり、不健康な人は必ず精神的に弱い人である事は、あなたの周囲を見れば一目瞭然、納得できるとことと思われます。健康になるには精神を鍛える事が重要であります。統計にある、働く人の6割が強いストレス

に悩む現在の日本の環境に於いては、あたりまえの普通の生活自体で精神が蝕まれ、ストレスが原因の種々様々な心因性の病気が異常なほど多くなっています。今こそ「人類の宝である坐禅」を生かすときと確信します。西欧の坐禅ブームのうねりが何よりの証でありましょう。

【三】〔動静一如〕(どうじょういちにょ)とは
さて禅の言葉に「剣禅一如」(けんぜんいちにょ)とか「弓禅一如」(きゅうぜんいちにょ)とがあります。「動静一如」とは、動と静とが全く差別なく一つになって、人間の心の中で一体化している状態の事です。静とは眠ったような状態、動とは意識が緊張している状態ですが、互いに矛盾した状態の共存は、けっして超論理の世界のことではなく、脳波を見れば、誰でも納得のいく事です。

安静型のアルファ波が出ているとき、外部から刺激を与えると、精神電流現象が起き、脳波は活動型のベーター波にすぐ変わります。医学用語では静的な脳波が動的な脳波に変わることをアルファ抑制(アルファ・ブロッキング)と言いますが、座禅中はこのアルファ抑制に対して「慣れ」が起こりません。医学的な常識では、普通何度も刺激を繰り返していると、いつの間にか慣れてしまって、アルファ抑制の効果がなくなるものですが、坐禅ではそれが無く、安静と動が、常に共存しつづけます。これが禅マインドとして知られる動静一如の科学的な説明になります。他の表現を用いれば、

さざ波一つ立たない青い水をたたえた湖のように、妄想の無い静かな心と、大海のようにどんなものでも飲み込んでしまう心とが同居しているわけで、矛盾のある見事な包含を表現しています。仏教でみる「色即是空」(しきそくぜくう)「空即是色」(くうそくぜしき)とか「無心有心」「明鏡止水」なども相反した矛盾がバランスをとって一如として体得される状態であり、科学的にも納得のいく事なのです。言い換えますと、「極めて高度な精神と肉体の調和状態といえるのではないでしょうか。」

【四】〔自律神経〕・・・「健康」へのキイ・ポイント
私たちの体は、自分の意思に関係なく、休み無く働いています。心臓を動かしたり体温を維持したり、運動をすると心拍が高まり、物を食べれば消化します。これは私たちが意識して行っているのではありません。全ては自律神経の働きによるものなのです。

すなわち自律神経とは人間の意志とは無関係に、その神経自体の自律的な働きで動いています。血管、心臓、胃腸、子宮、膀胱、内分泌線、汗腺、唾液腺、膵臓などを支配し、
これらの機能を自動的に調節する神経であります。自律神経には交感神経と副交感神経とがあります。この神経のやっかいなところは、人間の意志になかなか従ってくれないところにあります。

言い換えますと「人間」の生命維持という目標には従っても、各個人の意思には従はないのです。さて自律神経のうち、交感神経は心臓の働きを促進し、血管を収縮させたり血圧を上げたりします。主に昼間働いて、体を活動的にする神経であります。一方の副交感神経は、血管を広げ血行を促し高い血圧を下げ、栄養と休息を与えてくれます。

主に夜働いて体を休める神経です。さて私達の体が健康な状態とは、この二つの神経がうまくバランスをとって働いているときです。さて現代社会に生きる私たちを取り巻く環境はどうでしょうか                                                            

多様化しスピード化する競争社会には、過度の刺激や緊張が充満しており、人間の心を傷つけるエネルギーが社会に満ち溢れています。一億総ストレス社会といっても過言ではないでしょう。厚生労働省の統計では、働く人の6割が強いストレスで悩むという統計がで
ています。現代社会のストレスが自律神経を蝕んでいるのです。
ストレスによって大脳皮質が興奮すると、交感神経と副交感神経の神経転移がスムーズに働かず、体の諸機関の働きを円滑にする自律神経の機能がかえって抑圧されてしまうため、バランスが壊れるのが原因であるのです、今日のストレス過剰時代では肉体上の症状より、
むしろ心の状態が原因となる、心因性の症状が多いことが大きな問題です、ストレスに
よって、心理不安、不眠症、下痢、十二指腸潰瘍、食欲不振、動悸、パニック等の症状が出て、何度検査しても肉体的には異常が無い、その場合たいていが自律神経失調症です。「健康」へのキイ・ポイントはこの自律神経が握っているといえます。

以上をふまえ、すでに前述しましたように、平井博士は脳波と平行して調べられた、皮膚の電気抵抗の度合いを示す、精神電流現象は感情の変化や精神の動きを伝えるだけでなく、じつは自律神経とひじょうに密接な関係があることが、大脳生理学で明らかになってきました。坐禅中に脳波が安静型に移行し、脳の働きが平静になった時、

精神電流現象は逆に活発になったこと。これはすなわち自律神経の活動のレベルが上昇する事が確認さたことであり、このことは自分の意思ではどうにもならなかった自律神経が坐禅によって自由にでき、鍛えれれたたことであります。自律神経の機能をアップすれば、食後に交感神経が活発に働き、食欲を抑制し、脂肪の燃焼を促す事ができるのです。

肥満研究の世界的権威アメリカのブレイ博士や、京都大学大学院教授森村敏夫博士他、多くの学者が、肥満は自律神経の機能の低下が大きな原因だ、特に交感神経の活動が低いといわれています。また平井富雄博士らは実験中、大胆にも、坐禅中の禅僧にお願いし、数ミリリットルの血液を坐禅中に採らせてもらい調べてみました。

確かに酸素消費量は、それほど目立って増加していませんでした、しかし、乳酸の量は減っている事実が確認されました。このことから、坐禅により、交感神経から神経転移がおこり、副交感神経が優位の状態で活動していることが証明されたのです。詳しくいいますと、坐禅を行う事により、活動型で刺激に反応して肥満の原因となる食欲を抑制したり

脂肪燃焼を促すなど、刺激に敏感に防衛機制をとる交感神経が鎮静し、抑制型で精神の安定と休息を与えてくれる、副交感神経の働きが活発になるのです。坐禅を行う事により、人間が美しく健康を保つには重要なこの二つ神経の調整とバランスが大きく改善するのです、この二つの神経が、身体をコントロールしバランスよく作用させるには、人間の行動、その時々の健康維持や、
生活場面に応じて、それぞれの内臓器官や肉体組織に対して、生理的な体の体勢を常に整える為の変換である、(引き締め)や(緩め) 即ち、活動や緊張が必要なときは交感神経が働き、楽にしたり休息が必要なときは副交感神経が必要な活動を行えるように、坐禅を行うと交感神経と副交感神経の神経転移が、スムーズにできる
〔場〕ができ上がり、自律神経が鍛えられ、万病の元である自律神経失調症が改善されるのです。

脳波をコントロールできた坐禅はそれにも増して、人間の意志ではなかなかコントロールしにくい自律神経の働きまで変えることが証明されたのであります。昔から坐禅は「人類の宝」と言われてきましたが、坐禅の偉大な効能を世界的に証明した研究成果といえるでしょう。

【五】〔坐禅で行う腹式呼吸法は精神力と健康を大いに高める〕  
たとえば日本語に「あの人は息が長いと」いう表現があります。医学的に見てもなかなか的を得た言葉であります。反対に強く緊張したときや、人前であがった時にはセカセカした小刻みに息が速くなります。発作的な激情に駆られたときなどは、喋ろうとしてもとても正常な言葉が出てきません。これは息が速くなった結果なのです。

特に私の経験では心身症や、ノイローゼの患者さんの息は、殆んどの場合かなり早くなっています。特徴は吐く息が短く、しかもみだれ「肩で呼吸をする」、結局のところ、心理不安が呼吸に現れた現象であります。呼吸が速くなればそれだけ多く酸素が得られるのでしょうか?いいえ全く逆であります。かえって呼吸が浅くなる為に、せっかく吸い込んだ空気が肺の奥にある

肺胞(肺の中で酸素と二酸化炭素のガス交換を担っている無数の小部屋)まで達することなく、気管支の周辺で出たり入ったりしているだけであり、一回の呼気で、肺から出てゆく空気の量が少なくなり、炭酸ガスを含んだ悪い空気がそのまま肺に残留する事になる。この様な状態では、新しい酸素を多く含んだ

空気を吸い入れる余地が無くなり、しかもこれでは無理をしなければ息が吸い込む事ができません、反対に、はく息をゆっくりすることは、じつは効率的な呼吸法であり、
ゆっくりと、肺の底に残留する空気までしぼりだすような感じで息を吐ききると、空っぽになった肺と外の空気との間に気圧の差が生じ、無理に息をしなくとも、空気が自然に肺の中にドット流れ込んできます。

このように呼吸をゆっくりさせ、普通の人の呼吸数は安静時一分間に約18回ですが、これを坐禅中に行うと一般人でも呼吸数は一分間に、4〜5回となります。
さてまとめます、呼吸法を生理的にみますと、大きく二種類の方法があります。
一つ目は、普段私たちが無意識に胸で行う胸式呼吸です。これは胸で息をするやり方です、
肺は肋骨(ろっこつ)で囲まれているため、胸式呼吸は肺が大きく広がらず空気を大量に取り入れることが出来ません。日本を代表する健康医学研究家の塩谷信男医学博士が提唱の学説によると、

病気の8割が酸素不足の細胞が原因であり、現代人は、「高山病」に近い、慢性的な軽度の酸素不足の状態だと言い切られました(それを裏付けるけるように、最近東京・大阪に酸素だけ吸引する酸素バーが開店したり、家庭用の高濃度酸素が販売されている)、今日のストレス過剰の社会では、精神的ストレスが自律神経の働を低下させ、

セカセカと肩を上下させて小刻みに行う浅い呼吸のため、肺胞(肺の中で酸素と二酸化炭素のガス交換を担っている無数の小部屋)が正常に働かず、酸素を血液に十分送る事ができない、又小刻みでセカセカと忙しい割には、浅い呼吸のため呼吸活動に消費するエネルギーも益々多くなり、酸素だけががいっそう必要となり、慢性的酸素不足状態となる。当然肺に取り入れる酸素の量も少なくなると、心臓の活動も衰えそのため血液を送る力が

弱くなり、血流が滞って、動脈硬化、頭痛、めまいなどの症状は酸素と血流の不調には重大な関係があるのです。これらの症状も次で述べる腹式呼吸を行うとすぐに改善します。またそれ以外にも空気が急激に肺に入ることは、冷たい空気が急に肺胞に入ることであり、一番組織的に弱い肺尖(肺の最上部)を、結核菌などに冒されるとか、肺尖カタルなどにかかりやすくなります。

【六】〔腹式呼吸・健康の秘訣は横隔膜運動にある。〕
二つ目は坐禅で行う腹式呼吸です。生まれたての赤ちゃんはみんな腹式呼吸をしています。
これは赤ちゃんの呼吸する姿を見れば一目瞭然です。赤ちゃんは成長のために酸素の重要性を本能で知っているのでしょう、しかし成長するに従い、胸式呼吸に変わってきます。これには成長の過程で周囲の生活環境から様々なストレスを受けて、

精神が緊張することが多くなっていく事が原因と考えられています。さてこの腹式呼吸法の、空気を取り入れる量は、胸式呼吸より約5倍ほど多くなるといわれます。腹式呼吸は一言でいうと、腹が出るように息を吸うことです。なぜ腹が前に出るかというと、横隔膜(胸部と腹部を隔てるドーム形の筋肉の膜)が下方に下がるから腹が出るのです。

横隔膜が下部に下がれば胸の中の容積が下方に広くなります。また息を吐くときはお腹を引き込ませて背中の方に引きつける。このときには横隔膜は上方に押されて上がる。横隔膜が上に上がると、肺に残った悪い空気が全部外に押し出される。このために腹式呼吸が酸素供給面から見ても、一番よい呼吸法といえます。腹式呼吸は横隔膜運動によって行われており、この運動はその下部に位置しているすなはち、へその下の下腹部は太陽神経叢
(たいようしんけいそう=多くの自律神経が集まるところであり、健康に多いに関係あり)と呼ばれ、ここの活動を促し、

その結果、自律神経の働きも活発になります。これはまた全ての内臓の活性化に直結します。又腹式呼吸は横隔膜の筋肉と丹田=(臍下丹田=せいかたんでん=へその下の下腹部=へその下5センチ)の筋肉を強化させます。これは健康に必要な強い腹圧(腹の力)をつくります。腹圧が強くなければ坐禅のときの、細く長い呼吸はできません、

私たちの肺には筋肉が一筋もありませんが、腹式呼吸によって横隔膜の上下運動による、この横隔膜の上下運動をさせる主な筋肉が丹田(たんでん)に繋がっています。結局私達が意図する静かな坐禅の呼吸は、「丹田」=「臍下丹田」強化の運動だということです。じつはこの「臍下丹田」=(へその下5センチ)こそ最も重要な人間の中心であり、
私たちが坐禅をするときに精神を集中するところなのです。武道などでよくいう「腹が坐る」とか「胆力がつく」というのはここのことです。

このように坐禅で行う腹式呼吸は単に肺活量が大きくなるだけでなく、体中の細胞に胸で行う胸式呼吸より何倍もの酸素を行き渡らせ、又新鮮な栄養を細胞に供給します。又腹式呼吸から見る血液の流れを見ると、体中の血液の配分は約全体の半分が腹部にあつまります。それなのに丹田(腹圧)がなく、腹にたまった血を上部に押し上げ
ることができなければ、半分以上の血が腹部に溜まることとなり、全身を巡る血が不足します。これが貧血症であります、

つまり腹部には鬱血しやすく、澱んだ血液が長い腸管の周りには集まりやすいのです。
栄養のある食物をいくら食っても健康にはなれません、堂々たる体格の人の貧血症はこの様な原因です。細胞にとって一番欲しいものは酸素ですが、それ以外にも色々な栄養を欲しがっています。とくに腹部、腸管の近くは栄養の集積地であり細胞が欲しがる栄養の宝庫といえるでしょう。たんぱく質から各種のビタミン類まで、腸管周辺の血液が全身の細胞まで運ぶのです。そのためには、腹を前に押し出す。すなわち、

横隔膜を下部に下げる事=(臍下丹田に力を押し込める)=(腹式呼吸)をしたら、腹にたまった血液は全身を駆け巡り、全身の細胞は活性され、「健康」となるのは当然であります。まとめますと「健康を求める」「健康を語る」には、腹式呼吸はさけて通れない
問題であり、精神と肉体の健康には、腹式呼吸が必要であります


【七】「エネルギー代謝」(基礎代謝)の減少(極めて高度な心身の統一状態)
人間の体のエネルギー代謝のうち、最も最低と考えられているものが基礎代謝です。この基礎代謝は、朝眼を覚まして朝食を取らずにそのままベッドに静かに寝ている状態のときはかります。つまり人間が生きて行くのに、最低必要なエネルギー量を算出するわけです。さて坐禅中のエネルギー代謝を、平井富雄博士とそのグループが実験計算したところ、また

もや大変な結果が出ました。坐禅中のエネルギー代謝は基礎代謝より、20パーセントも下っていたのです。つまり朝目覚めて朝食を取らず、そのままベッドに静かに寝ている状態よりもエネルギーが消費されない状態ということになります。何と驚異的なことでしょう、眼を開いて坐禅をしているのですから、当然使われるエネルギーは基礎代謝より多くなると予想していたのですが

事実はこれとは全く逆だったのです。この生理現象から教えられる事は、車に例えれば
完全燃焼以上の超完全燃焼ともいえ、人体に例えれば「精神と肉体の超回復現象」の発生であり、坐禅を組む事により、極めて高度な精神と肉体の調和状態がうまれたといえます。いいかえれば「最高の健康状態であり」「心と体が改善される状態といえましょう。」
「坐禅」は癒しやリラクゼーションに、また現代病である、心理不安・ストレス・イライラ・不眠などの心身の大いなる回復に貢献することが現代の先端科学で証明されとことをあなたも納得できたことと確信いたします。

【八】以上のまとめ
@坐禅を行うと、脳波を自在に変える事が証明された、活動型の脳波(ベ―ター波)から安静型のアルファ波やそれ以上深いシーター波に移行することが確認された。これは体に休息を与えた事であり、ストレス、不眠、心理不安、イライラなどのを改善できる証である。
A坐禅により、血液中の乳酸の量及び精神電流現象(坐禅中に定期的に外部から刺激を与える)の結果、静的な脳波が、動的な脳波に変わるアルファ抑制(アルファ・ブロッキング)に対しての「慣れ」が起こらないことが解明された、これは〔外部からの刺激には平時より反応は鋭いが、精神状態は絶対の安定を保たれている〕、〔脳活動が新鮮で長く持続されいるが、意識は対極の休息状態にあるという、〕俗にゆう(融通無碍=ゆうずうむげ・一つの考えにとらわれることなく、どんな自体にもうまく対応できる)とか(動静一如・どうじょういちにょ、相反した矛盾がバランスをとって、一如として体得される状態)すなわち静と動が常に共存し続ける状態であり、これはあらゆる環境や逆境に最適に対応できる精神の涵養であり、日常生活全般、対人関係・健康・仕事・趣味に大いに貢献する。

B坐禅により、エネルギー代謝が減少する、(基礎代謝より二割も減少する)、ことはベッドに静かに寝ている状態よりもエネルギーが消費されない状態ということであり、驚異的な状態といえ、人間の脳は他の器官と比べエネルギー消費量は非常に大きい器官であるが、坐禅中は安静が保たれている原因により、その脳で節約されるエネルギー分だけ代謝量が減ると推測された、すなわち体内のエネルギー配分を調整しながら心身に負担が無く、生きた歯車のように円滑に動く、健康はいかにエネルギーを浪費せず効率的に使うかであり、この知恵を身に付ければどの様な局面にも対応できる。

C坐禅で行う腹式呼吸は、普通の呼吸の3〜5倍の酸素を取り入れることができることにより、全身の細胞が活性化され、自然治癒力が増進する。また肺低呼吸は精神が安定し、重心が下がり胆力と度胸がつく。

D坐禅の要点は「姿勢」「息の吸い方」「心の整え方」の三点の溜養は800年間の歴史に裏付けられた、「心と体のトータルバランス」であり脳細胞から内分泌作用が活発となった自律神経の高度なバランス状態(健康状態)であることが脳科学で証明された

E以上@〜Dの実験結果より言えることは、坐禅を行うと、健康増進の鍵を握る「自律神経」が大きく鍛えられる。自律神経の2大神経である、交感神経と副交感神経の神経転移が、その生理的状況に応じスムーズにできる〔場〕ができ上がり、万病の元である自律神経失調症が改善されることにより、美と健康に大いに貢献する。

F坐禅は、他の癒しやリラクゼーションに見られるように、安楽椅子に座ったり横たわる受身の感覚遮断ではない、前述の三点で見られるように坐禅は能動的(自ら起す)感覚遮断がその本質的特長であり、精神鍛錬の最たるものである。ストレス社会においては受身の手法は限界があり、不健康な者は精神が弱い、逆に、我々の食生活の全ては自己を律する強さを必要とされ、精神力は健康への近道である。強ければ周囲を愛情と冷静と大局眼で見ることができ、人生に自信と余裕・矜持・自己確立という福音がともなう

最後に
坐禅と脳の研究における直近情報としまして、東邦大学医学部統合生理学教授で脳科学研究の第一人者である有田秀穂教授は現代のストレス社会を生き抜き、健康を維持するには、脳内物質であるセレトニンを作るセレとニン神経を鍛える必要がある。また内蔵・血管などの働きをコントロールし、体内環境を整える自律神経の2大神経である副交感神経(寝ているときに優位)と、交感神経(起きている優位)の切り替えにセロトニン神経が大きく関わっている。坐禅は偉大な脳トレーニングであり「脳」「心」「身体」を整え
セレトニン神経を一番活性化させる最適な様式を確立したのが坐禅と断言されています。
有田秀穂著 禅と脳  (玄侑宗久共著)
有田秀穂著 脳のちから禅のこころ(玄進侑宗久共著)
有田秀穂著 呼吸を変えれば「うつ」は良くなる
有田秀穂著 脳からストレスを消す技術
有田秀穂著 セレトニン欠乏脳     他多数 ぜひお読み下さい。

☆一般人に健康法としての生活坐禅を説いた、300年前の高僧「白隠禅師」や、古来より坐禅修行した昔の人は自律神経の存在に気付いており、自律神経郡が集中する(丹田)というのは、現代の医学用語の下腹部の神経叢(しんけいそう)を示しており、坐禅でへその下の下腹部が重要視されるのは、これらの神経郡の原因といわれます。
腹に気を満たして、自律神経を活性化させるべきだという、坐禅の深い知恵は、脳の科学が発達するはるか以前に、体験によって先人に発見されていた。

坐禅は、脳波と同時に呼吸やエネルギー代謝、脈拍や精神電流現象を変化させることにより「心」と「体」の健康に大いに役立つ事が実証され、しかもそれが過去の高僧が、坐禅について語ってくれた言葉とも完全に一致する。したがて坐禅の持つ古来の知恵と、現代の坐禅の科学が完全にドッキングした心の宇宙を、現代人は驚嘆の目で見ることとなった。今日の精神医学は坐禅の後をなぞって坐禅に導かれて、新たな研究領域を開いている感があります。

参考文献として
坐禅の脳波的研究 集中性緊張解放
による脳波変化 平井富雄・論文
夜船閑話  伊豆山
意識のスペクトル ケン・ウイルバー
禅ゴルフ ジョセフ・ペアレント
禅僧になったアメリカ人 トーマス・カーシュナー
夜船閑話 芳澤勝弘
禅と生命科学 盛永宗興
禅と脳  有田秀穂(玄侑宗久共著)
脳のちから禅のこころ 有田秀穂(玄侑宗久共著)
心理禅 佐藤幸治
白隠禅死の準備  荒井荒雄
白隠禅師の健康法 直木公彦
医師白隠の呼吸法 村木弘昌
心理リハビリテーション 成瀬悟策
サイコフードバック 池見酉次郎 
診療内科 池見酉次郎 

【九】 実際に坐禅するとどんな気持ちか
坐禅を、坐禅椅子で行うと途端に心はグンと安定します。何かしら嬉しく、心は優しく癒されます。何と心地よく、安定した気分なんだろうと、強く心に訴えるはずです。今まで一度も経験した事も無い様な、気持ちよい安らぎと、安心感と喜びが湧き上がってきます。禅の言葉で坐禅は安楽の法門と言います(坐禅は精神の大いなる悦楽とも言えます。)
☆ある意味「坐禅は究極の贅沢とも言えるでしょう。」

実はこれほど心地良く、心が満足感に満たされた至福と言える心の状態は、なかなか経験する事が出来ないでしょう。坐禅はその行為、そのポーズ自他が大きな価値があるのです。人はその中に仏性や神性が宿るといわれます。坐禅を組むとこれらとの一体感を呼び起こし、不思議で崇高な心理的感覚を呼び起こすのです。あなたは今までの人生で、本当の意味で心の底から(あーこの一時こそ幸せの実感だ・うれしい)と確信する経験はあるでしょうか?楽しい家族団欒の時、仕事がうまくいったり人間関係が良い状態である時、
がしかしこれらが一時的に良い状態で推移しても、私たちの心には何かしらやはり、

不安が付きまとうものであります。ずばり申します、坐禅より得られる幸福感や、精神力や自信は、本質的に違うのであります。神の如き高邁な精神の絶対の安心、心の奥底からの安定なのです。富士山が天に向かって、どっかとそびえる様に不動であり、現在のあなたがどの様な逆境であろうとも、坐禅を組めば一瞬にして好転し、心はその逆境の原因を解明し、その答えを出し、瞬時にしてそれに耐え得る強靭な精神力を涵養されのです。そしてそのまま坐禅を組み続ければ、しらずしらずあなたの頬は緩み、やがてにっこりと微笑むほどに、心の快味が込み上げてくることでありましょう。

人によっては感激の涙をこぼす方も多くいます。この時、あなたはこれは一体なんなんだ、
この素晴らしい心境はどこからだ来るのか、この満足感、この幸福感に驚嘆することでありましょう。これを禅語で言う(三昧の境)と言い、心身が統一された無念無想の心の状態をいいます。又悟りとも言います。坐禅はインドで生まれて数千年間、日本に伝来して800年、その間に日本で完成したと言われます。

その長い間に出家者、修行僧また多くの一般人の数え切れない人が、健康や、幸せや、人間道の追求のため、坐禅を求め、その実践の結果としての、功徳や効能が絶大であるからこそ、坐禅は最高の健康法、精神強化法、人類の知恵の集積といわれてきました、昔から日本では、坐禅は〔人類の宝と〕といわれてきましたが、

残念ながら日本でどれほどの一般人が坐禅の素晴らしさを理解しているでしょうか?
今日のアメリカ・ヨーロッパの坐禅の大ブームは、西欧的物質主義思考、科学万能主義の西欧人の多くが、自分たちの文明に懐疑的になっており、西欧の精神科医や心理学者が、精神衛生面とか精神医学の面から、西欧人の精神の危機を予測し、その解決策の精神的救済を要請しているのがその背景にあり、

坐禅の本家であった日本をはるかに凌ぐ坐禅の大ブームが起きているのです。なんと北米だけで140箇所の禅センターが存在しており、今では坐禅の普及は世界中で、欧米がその中心となっており禅グループも500以上存在し、なにより欧米人の良いところは、
坐禅を一般人が行うところに大きな意義があります。同様の目で見ると、日本においても、科学文明や先端技術が発達すればするほど、健康や幸福になるはずなのに、逆にコンピューター時代の到来と同時に、ストレス時代が平行し、心身症などの精神障害に苦しむようなりました。今ではまさしく坐禅は逆輸入でありますが、何ゆえに、こんなすごい「健康法」があるのに一般人に普及しなかったのかは、何回も前項で述べたとおり「足の痛さ」なのであります。貴方も坐禅椅子の坐禅を行えばわずか15分で今まで経験したことがない心の奥底からの幸福感を実感されるでしょう。